《異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編》第74話 それならば…

凄いな。

ローゼさんから話を聞いた俺の素直な想がそれだ。

そう思っているとローゼさんが

「だがら、だから私は彼を助けたい」

と更に深く頭を下げてきた。

「わかりました。取り敢えずもう頭を下げるのはやめてください」

と、俺が制すとローゼさんは頭をあげる。

子供に頭を下げれるローゼさんを素直に凄いと思う。

「ローゼさんが頭を下げようと下げまいとお父様が戦爭に行く時點で僕がお父様について行くのは決定事項ですから。

もしローゼさんが知らせなくとも僕はきっと近いうちに気付いたと思いますしね」

250メートル以上を見せる神眼があるのだ。

お母様が、お父様が戦爭に行った事を隠し通せ続けるのは不可能に近い。

つまりは早いか遅いかの違いで、どうせ行くなら早いうちに知っておいたほうがいい。

準備期間の問題もあるが、もし萬が一お父様がリュミオンにってから知ったら道中で敵に遭遇する恐れあり、大変危険だからだ。

結局いつ如何なる瞬間に知っても行くことは前提なのだから。

「ローゼさんの気持ちはけ取りましたので頑張りますよ」

頑張るなんてものじゃねーけどな。

リアルで人を殺しに行くんだからな。

海戦は、亡くなった方には申し訳ないが俺は基本的に高みの見だった。戦いになってからはし離れたところから見ていただけなので何処かドラマを見ているような気分だった。

負けそうになれば俺だけでも撤退。

敵の船が自軍の包囲網を抜けて俺の乗っていた船に迫ってきたら、出來る限り他の船が助けに來るまで逃げまくるという安全策を取るつもりだったしな。

前回と違って今回は地上戦だ。

場合によっては、敵が俺のところまで來るだろう。

殺られる前に殺らなければならない。覚悟を決めなければならない。

それと、俺は続ける。

なんて自分勝手なものだと僕は思いますけどね。

両想いでない限りは自分の好きという気持ちを相手に押し付けるわけですから。

特にお父様はオモテニナラレテイタみたいなのでね。

お父様の奧さんになれたのですから長い目でゆっくりと気長に機會を待ってればいい、と、僕は思います」

參考文獻はギャルゲーとエロゲーだ。

え?がっかり?

貞だから仕方がない。

因みに俺は前世で告った事も告られたこともない。

一思春期男子として、好きなの子は勿論いたが、男が付き合うという事を意識した時、既に俺には告る勇気が無くなっていたからだ。

その俺の発言に対しローゼさんは、

「そう。ありがとう」

といつもの無表に言って頭を下げるだけだった。

うーむ、顔が全く変わらないからどうけ取ったかわからんな〜。

ふーんくらいにしか思われていなかったら、と考えると恥ずかしさで死にそうだ。

とっとと退散するか。

「では、僕はこれで部屋に戻ります」

と部屋に戻る事を伝えると、

「待って」

と呼び止められる。

振り向くと、

「お互い頑張ろう」

と言われた。勿論だとも。

「はい。ローゼさんも頑張ってください」

と言い、今度こそ部屋に帰る。

そして、次の日、お母様が俺の部屋にやってきた。

「レイン、るわよ?」

とドアの前から聞いてきた。

「はいどうぞ」

とお母様を部屋にれる。

お母様の目元にはしクマがあった。

俺は先手を制する事にする。

「お母様、申し訳ありません。

お母様がどう説得なさろうと僕はお父様についていきます」

決意は先にはっきり伝えたほうがいいだろう。

だがお母様は信じられないような言葉を俺に告げた。

「わかっているわ。だから、もう止めないわ」

「…えっ?」

信じられずつい間抜けな聲を出してしまう。

すると、お母様はし笑顔を見せて、

「もう貴方が戦爭に行く事を止めないわ」

と言った。

突然、俺のガクガクガクとが勝手に震えてきた。

からがさぁーと引いていくのが自覚できる。

自分勝手でお母様のあまりにも言うことを聞かなかったからもう諦められたと思ったからだ。

頭が一瞬真っ白になり、なんとか

「お、お母様、あ、あの、も、もしかしてぼ、くの事、そ、そのき、嫌いになりましたか?」

から絞り出す。

するとお母様は、笑顔から驚いた顔をして、俺と視線を合わせてギュッと抱きしめてくる。

「もうレイン、そんなわけないじゃない。

そういう事じゃないわよ。私が一晩考えてそう結論を出したのよ」

そ、そうだったのか……。

焦らせないでくれ。

ホッとしたら中から汗がドッと出てきた。

「あら?レインたら!大丈夫?!」

とお母様が心配そうに言う。

それに対し、俺は汗を拭きながら

「あ、いえ、お母様に嫌われたと思いまして。

もう大丈夫です」

と話す。

いやもう本當に焦ったわ。

焦り過ぎると耳鳴りとただ立っているだけなのに心臓の鼓が耳の中から聴こえてくるんだな。顔にが行くからかな?

あれ?俺だけか?

お母様はし離れてそんな俺を慈しみの笑顔で見て、俺の頭をでる。

「レイン、そんな事は絶対にあり得ないわ。そうじゃなくてね、今から10年以上前ロンドのお父様が殉職なさったのは知っているわよね?」

もちろん知っている。ローゼさんの話にも出てきたし。

「だけど、ロンドはお父様が戦爭に行っていた事を知らされていなかったの。それで一時期、自分を責めて、荒れて、更には帝國人皆殺しにしてやるって徴兵令まで出してリュミオンに行こうとしてた。

知らなかったからしょうがないとはやっぱりならないわ。

周りと私が必死に止めて何とかなったけれど多分彼は今でも帝國を恨んでいる。

レイン、貴方はロンドの子供よ。

ロンドは13の時だったけれど、貴方はまだ6歳。ロンドがリュミオンで何かあれば、貴方は、壊れてしまうかもしれない。これからまだまだ続く人生を恨みでダメにしてしまうかもしれない。

ロンド以上に貴方にはそんな脆さがある」

人間不信時代の俺を見ていたから言える発言だ。

そして、多分間違ってない。もしお父様に何かあれば俺はこの支援チートを護るためではなく殺すために使うだろうという事はなんとなく予想が出來る。

「ならば、貴方が納得できる人生を送ってしいの。貴方は6歳だけどもう立派に判斷が出來る子よ。迷ったらいつでも相談にのるし、悩んでいたら話を聞いてあげる。貴方が間違った行をしたら注意もするわ。だけど、最後には貴方に判斷してしいの」

とお母様は締めくくった。

「そう、でしたか……」

そうとしか言えない。

お母様なりに、過去にあった経験も基にして一晩悩みに悩み、葛藤し、考えた結論。

つまりは俺の判斷を信頼するということだろう。

だから俺は深く頭を下げてこう言った。

「ありがとうございます」

それからお母様に頼みごとをする。

頼み事というか俺が戦爭に行く以上、萬が一を考えないわけにはいかないからだ。

その頼み事とは、お父様に1度この城に戻ってきてもらう事。

ちょうど王都からリュミオンへの道の途中にこのオリオン領があるからそれほど遠回りにはならない。

お父様をわざわざ家に呼び戻す理由。それは俺が持っているオリオン家の寶の継承権を兄弟の誰かに譲る為に。

そして、それを頼んだ後、お母様と別れて、剣と訓練を開始する。

近くに敵が來た場合、やはり弓より剣の方が安心だろう、という安直な考えによるものだ。

すると、ローゼさんがやってきた。

え?なんで?

と思ったのだが、すぐに

ああ、俺を見に來たのか。

と、納得する。

そりゃそうだな。お父様のことを任せたとはいえ、例え何もできなくても気になってつい観に來ちゃうのは俺にもわかる。

「こんにちわ」

と俺は挨拶する。ローゼさんもこちらにし頭を下げる。

そして、こちらを見守る。

と、思っていたのだが……。

よく見たらローゼさんは軽裝だ。

まるで今から運をするような服だ。そして何と……。

剣を持って振り始めた。

え?何で?

本日2度目のえ?なんで?である。

なので聴いてみた。

「あの、ローゼさん」

という俺の聲にも手を止めず、真っ直ぐに剣を振っている。剣を振った経験があるのか剣筋も真っ直ぐで、背筋もピンと張っていてしい姿勢だ。

そんなローゼさんは、顔も向けずに聲だけで、

「何?」

と聞き返してきた。

いや何?じゃないよ。

「な、何をやっているのですか?」

と俺が聞くと、

「剣を振っている」

と、見ればわかるだろ、と言外に言っているように言う。

うんそれは俺にもわかるよ。

そうじゃなくてね。

「聞き方が悪かったですね。

何で剣を振っているのですか?」

と俺が聞くと、さっき言ったのと全く同じ調子で、

「私も戦爭に行くから」

と言った。

「は?」

何言ってんだ?いやいや、え?何で?

「えーと、な、何故ですか?」

なんでローゼさんが行く事になるんだ?

「貴方だけ行かせて私が行かないわけにはいかない」

あ、あ〜そういう事か。

「いや、あの、そんな重く考えなくていいですよ本當に」

そう気を使う俺に対し、

「それに、私はこの時の為に努力した。だから、貴方が私を気にする必要はない」

と言った。

「は、はあ〜……。あの、ローゼさんには家に殘っていただきたいのですが」

と俺が言うと、剣を振る手を止めて、俺を睨んでくる。

あ、怒ってる。

「何で?」

何で?ってそりゃ俺がいれば十分だからだべ?

ああそうだった。

俺の魔法の能力を全部知っているのは両親とスクナとリサさん、オリオン騎士団の隊長と副隊長だけだ。

他の人たちは、俺が魔法を使える事くらいしか知らない。

「いや、あの、そのですね……」

うーむ……、と言い淀んでしまう。

俺が戦爭に行くのはポルネシアを勝利に導くためでもましてやリュミオンを守るためでもない。

お父様を助け、無事な姿で家に返すためだ。あとは今の6歳児の俺にはどうでもいいのだ。

大人になったのならまだしも、6歳児のの俺にそれ以上を求めないでほしい。

だが、ローゼさんが付いてくるとローゼさんの命を気にしなくてはならなくなる。

戦時中、俺が絶対に守らなければいけない命は俺とお父様のだけにしてしい。

逆にローゼさんがくるメリットはぶっちゃけないに等しい。

ローゼさんでは俺の魔力の10分の1もカバーできない。

魔法才能だってローゼさんは水魔法が6だが、俺は8だ。しかも聖魔法も7まで使える。

攻撃系統の多いの火魔法とかならまだしも回復系統が多い水魔法だといよいよ役に立たなくなってしまう。

邪魔にはならないだろうが、俺の心の平穏の為にも是非とも家に殘っていただきたい。

「僕がローゼさんを心配になって集中できませんので」

「貴方は自分の心配をすべき」

「僕はいいのですよ。守ってもらいますから。ですが守る人間はない方がいいのです」

「貴方にどんな力があるかわからない。だけど、私はスキルで水魔法が7まで使える」

と、ローゼさんは言う。

うん。知ってるよ。

どうしよう…。

いやもういっそ、俺の魔法才能についてちょっと話すか。

あ、いや…うーむ、今までの自分の努力が無駄だったとかとられるのはな〜…。

どうしようか…。

よし、お母様に相談だ。

ついでにその前に仲直りが出來そうかリサさんと相談もしに行こう。

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