《転生先は現人神の神様》52 殿下のお迎え

「どうでした?」

「確かに……々妙ですね……そちらは?」

「市民達はいつも通りでしたが、監視らしき視線はじましたね」

「ああ、やはりそちらにもいましたか。こちらも見られている気がしてたんですよね」

2人の男が會話している場所は部屋……ではなく、馬車の中。

目隠しされて連れて來られたらどこかの一室だと思うであろう所だ。しかし、馬車の中である。

ルナフェリアがファーサイスに置いてきた馬車である。

本人からすれば『これ、もう使わんな? 勿無いし使いそうなファーサイスにあげるか』だが、ファーサイス側からしたら『やべぇ、國寶級だこれ。王族専用にしよう』狀態である。

それが今回ハンネス殿下の迎えに使用されている。確実に依存の馬車より丈夫だし安心だ。

なお、國の魔導技師隊が『解解析したい!』とか言って一悶著あった模様。

ルナお手製馬車はファーサイス西にあるダンサウェスト小國に立ち寄り、報部からった報の確認をしつつ、ダンサウェストの北にあるアエストへと向かう。

中に乗っているのは、ファーサイス第2王子であるハンネス殿下のお迎え隊。

ブリュンヒルデを筆頭とした戦えちゃう侍數人と、近衛兵の中でも更に優秀な騎士數人。

そして馬車の外には々若めの騎士達が馬に乗って移している。若めとは言っても彼らも優秀な近衛だ。要するに護送任務の経験の為。しかし、今回は不穏な報がっているのでベテランも數人付いている。

馬で移する者、馬車で寛ぐ者、互にれ替えながら進んで行く。

「いやぁ、凄いなこの馬車。快適な旅だ」

「帰りは殿下がいるから無理だけどな」

トイレはあるし、シャワーにれる。食材さえ確保しとけば暖かいご飯が食べれる。更に布団まであると。まあ、人數の問題で布団は使っていないが。

「全く揺れないと言うか、窓を見ないといてるかどうか分からん」

「快適すぎてヤバい」

なんてことを言いながらアクエスへ向かい、到著は明日という日の夜、全員が馬車部にて最終確認と言う會議をしていた。

「まず、報部が言うには近いうちにアクエスで一悶著ありそうという事だ」

「我々の役目は殿下を無事にファーサイスへと帰す事です。最悪殿下だけでもアトランティスへ行ければ我々の勝ちです」

「場合によっては殿下以外も乗せることにはなりそうだが、それも想定してこの馬車だからな」

「馬車自が軽く、中に何人乗ろうが速度も変わらない。問題の広さも十分ですからね」

ある程度の行パターンを決めておき、後は臨機応変にいく。正直それしか無い。

以前ハンネス殿下が帰ってきた時の話では國王派、王弟派と別れていて大変だと同い年のアエストの王子から聞いたらしい。

だが、恐らくそれ以外にも屬國派の裏切り者が混じっているんじゃないか、と報部は見ているようだ。アエストの現王は大きな問題は聞かないが、王弟の方はこう、めでたい頭をしていたはずだ。現王を落とし、王弟を王に出來ればるのは楽だろう。

そんな報を共有しておき、その日を終える。

翌日、日が昇ると同時にき出しアエストへと向かう。

「さて、著く前に邪魔がるか。それとも、そもそも今日じゃないか……だな」

「今日じゃないのが理想ですねぇ……」

「まあそうだな」

特に問題なく門を通過し、學園へと真っ直ぐ向かう。その間、外にいる者はしっかりと周囲を探るのも忘れない。既にひっそりと警戒態勢だ。知系スキル総員である。

ファーサイスの騎士は優秀と有名だ。いや、優秀でなければならない。かな土地を守るために優秀でなければならなかっただけだ。

ファーサイスは普通の騎士でもなるのが難しい。近衛となれば尚更だ。なくとも貴族の家のコネだけではなれない。騎士となる個人の実力や格が最重要である。

そんな優秀な騎士達とブリュンヒルデ率いる戦えちゃう侍が學園へ到著した。

「なんか、あっさり著いちゃいましたね……」

「……ほんとにな」

知系も特に反応ありませんでしたし、今日じゃ無さそうですかね?」

「かもしれんな。まー……予定通りアトランティスまでは気を抜くなよ」

「了解です」

「じゃあ、殿下のところへ行ってくる。いいか、なんとしても馬を守れよ」

神妙に頷き合い、各自周囲警戒しつつの休憩へる。

警戒していますよーとすぐ分かるような事はしない。いつも通り、普段通りを裝いながら知系スキル総員である。

からすれば表面上無警戒なのは基本スキルだが、近衛騎士からすれば々難しい。なぜなら『警戒しているのが普通』だから。一目で分かる護衛の立場。自國の貴族達と會うときでさえ警戒心剝き出しなのだ。王族をお守りする最後の砦。

実はファーサイスの場合、警戒心剝き出しじゃない近衛騎士達の方がヤバかったりする。実力があるほど、近衛になって長いほど余裕ができるからだ。

警戒心剝き出しの近衛兵の中にすこーしだけ混じっている、お気楽なの無い緩いやつ。こいつらが1番ヤバいのだ。微笑と言う甘な仮面を顔にり付け、脳で超厳しいチェックが行われている。よーく見ると目が笑っていないのだ。どう考えても不気味である。

語のような騎士様? うん、見た目はそうだな、見た目は。形揃いだから。どう考えても腹黒だけど。

「失禮します。ハンネス殿下、お迎えに參りましたよ」

「うん、ご苦労様。早かったね?」

「非常に快適な馬車できましたので、期待してください」

「へぇ……新しい馬車作ったんだ?」

「いえ、頂きです」

「……貰いなの? 獻上品とか?」

「ううーん……?」

ハンネス殿下はルナフェリアの事は知らない為、なんて説明したものか……と言う狀態である。

「まあ、帰りながらゆっくりお話しましょうか。ささ、帰りましょう殿下」

「あれ、一泊しないのかい?」

「馬車のチェックもありますが、王妃様が早くお會いしたいようですよ?」

迎えに來る前に決めておいた方向でさらっと噓をつく。

母親が早く息子に會いたいだけだよ? ええ、それだけですとも。

流石に『この國ヤバそうなのでさっさと帰りましょう』とは言えん。ここにいるのは殿下だけではないし。

そして、ハンネス殿下も優秀だ。チラチラと視線だけかし、自國の騎士達の顔をチェックし、心びっくりすると共に、納得もする。

まず、メンツがいつもと違う。近衛は他の騎士達と比べると數がない。そして大王族、上層部の守りに付くため大が顔見知りである。知らないやつが混じってますは困るのだ。

軽くチェックしただけでも近衛の中でも上位が複數混じっており、経験は劣るが実力は確かなその他。更にブリュンヒルデを筆頭とした戦えちゃう侍だ。明らかに戦闘を想定した守りである。

そして同い年の親友であるアエストの王子からの報もある。まあ、報と言うより、愚癡に近いが。それでも狀況を判斷する為の立派な報ではある。

それら(報)と、これら(護衛メンツ)から考えると、王妃……母が早く會いたいと言うのも噓ではないだろう。言葉が足りてないだろうが。

『(アエストが不穏だから)王妃様が(安心したい為)早くお會いしたいようですよ?』

要するに、『心配だから早く帰ってきて顔見せろ』である。決して離れてて寂しいからではない。

「ふふふ、今回の馬車は寢泊まりできるんですよ」

「へぇ! それは気になるね。じゃあ馬車の方に行こうか。どうせ荷の方は侍がやってるんだろう?」

「ええ、やってますよ」

最悪荷は置いていけばいい。取られて困るようなは無いのだから。

殿下に付いて學園にいた侍も『重要な報』は持っていないため、あえて狙う必要もないだろう。下手したら置いていった方が安全の可能が高い。

まあ、余程切羽詰まらない限り置いていく事は無いのだが。殿下に付いてるのだから優秀なのだ。ここ最近は殿下に付いて學園にいたから國に関する最新報などを持っていないだけで。

「そう言えばアーレント伯爵家の令嬢もいるけど、一緒じゃ問題かな?」

「いえ、問題ありませんよ。ただ、狙いが分かってないのですよ……」

「ふむ……」

最後の方は小聲でハンネス殿下へと伝える。

「向こうにも迎えがあるだろうし、見かけたらでいいかな」

「そうしましょうか」

◇◇アエスト大國・王都◇◇

「配置は済んだか?」

「ああ、さっき連絡が來た」

「いよいよか……」

「もうすぐだ」

「さあ、始めようじゃないか。繁栄のために」

「繁栄のために」

男達は行を開始した。

『繁栄のために』

上を……夢を見すぎた結果、自分達がやっている事が何なのかすら分かっていない。

いや、片方は分かっているのだろう。仕掛け人なのだから。

元々は天才ではないが、努力するタイプの國者だった。こつこつ、こつこつと國のために。

しかし、ヨイショされ徐々に……徐々に歪んでいった。導と言うより洗脳に近いだろうか。

父の代からじわじわと使われていたのだ。

過程や理由はどうあれ、反逆罪には変わりない。

功させない限り死は免れない。功しても使い捨てられる可能はあるが。

◇◇◇◇

アエスト大國

王都の一角が丸々學園となっており、學園に通っている生徒達を目當てにお店もある。

その為、學園はほぼ隔離狀態となっており、その一角のみで生活が可能の學園都市となっている。

経済法科、武闘、魔法と3つの大きな校舎が存在し、それぞれの施設と膨大な土地がある。そしてし離れた所に寮があり、更に外側にお店が並ぶ。

経済法科はともかく、武闘と魔法は戦闘訓練が行われる為、かなりの規模になっている。

中級や上級と言った魔法使用もできるよう、魔法が特に広くなっている。

そのせいで気づくのが遅くなり、逃げ遅れる……事にもなるのだが。

「なぁ……」

「ああ……気のせいじゃなかったか……」

「囲まれてるな?」

「これは最悪の狀況か?」

「いや、閉じ込めるだけと言う可能もあるからな……とりあえず合流するか」

「そうするか」

「……囲まれた? 後はそれが最後ですか?」

「うん、これが最後」

「では急ぎましょう。皆さんはさっさと馬車に乗ってください。場合によっては荷を投げ捨ててでも乗っちゃってください。その方が安全なので、そういう話が付いています」

「分かったわ。……そこまで言う馬車が気になるわね」

「……あれは、凄いですからね。お楽しみです」

「……よし、終わったわ」

「では、さっさと行きましょう」

休憩していた騎士達と、荷をまとめていた侍組がそそくさと合流地點、馬車の元へと向かう。

ルミナイト、マナタイトクォーツを使用したルナフェリアお手製馬車の元へ。下手に《防魔法》で防ぐより馬車を盾にした方が良いという代だ。

《気配知》や《魔力知》、《萬能知》と言った知系のスキルは、スキルレベルが上がると知範囲や度をサポートしてくれる。

護衛が基本の騎士達からすれば必須スキルとも言える達だ。騎士でなくても便利であることには代わり無いし、冒険者達も重寶する。魔の位置や人の位置がある程度分かるからだ。

もちろんこの探知系を妨害するスキルも存在するし、気配や魔力などと言ったを自力でコントロールする事で、誤魔化すことが可能である。

探知系は割りと大雑把な音響定位と言えるだろうか。エコーロケーションと言われるコウモリなどが使用しているあれだ。あくまでイメージは、だが。

気配や魔力と言ったを自力で斷てば、この辺りの知には引っかからない。ただ、生である以上完璧に斷つことは不可能と言えるが。

それなりに高レベル帯の知系を持っている近衛やブリュンヒルデを筆頭とした戦闘侍

知距離をばすとその分度が甘くなるとは言え、スキルレベルのサポートもあり使えなくはないぎりぎりぐらいの距離まで広げていた。

それによると學園を囲うように恐らく人がいるというのが分かる。

偶然で綺麗に囲まれるわけがなく、いている気配が無いのだから確定だろう。

「へぇー! なにこれ凄いね。どうなってるの?」

「これはですね―――」

馬車の元へと來たハンネス殿下とベテラン近衛達。

そして、説明を聞いた殿下は……。

「うん、さっぱりわからないや」

「簡単に言ってしまえば……そうですね、こういう狀態らしいですよ」

と言って騎士が地面にグリグリと絵を描く。

今見えている馬車本と矢印の付いた外側の四角。そしてどこにもれていない、側の四角に矢印で拡張されて広くなった部、と書かれる。

「なるほど……。とにかく作製者が凄いという事が分かったよ。ファーサイスにいるのかな? 魔導技師隊の人?」

「えっと……殿下がどこまでご存知か分かりませんが、『ルナフェリア』と言う名前に聞き覚えはありますか?」

「……ああ、最近ニコラス殿下から聞いたね。なんでも聖域を開拓したから、そこに住むとか? 父上からも王都にある聖域はそっとしておけとか聞いたけど……」

馬車に乗り込み、置いてあったソファーの方で寛ぎつつ、話を進める。

「簡単に言いますと……2度ほど純正竜から國を救われ、王都を囲む城壁を作って貰う代わりに土地を與えたのですよ。好きなだけ土地取っていいけど、その分城壁広げてねと言う條件で。そこに霊様が集まり聖域となっていました」

「ちょっと待って……? 2度ほど純正竜から救われたって何? 僕がいない間に何があったの?」

「最初はシーフープにシードラゴンが現れまして、ルナフェリア様が討伐されたのですよ。シーフープの被害は一切ありませんでした。次は東側の森で発生していたアンデッド大量発生の件ですね。エルダーリッチがミストレイスドラゴンを召喚しましたが、同じくルナフェリア様により討伐されています。ちなみにどちらも単騎討伐です」

「……とんでもないね」

「この後會うことになると思いますので、よろしくお願いしますね。帰りはアトランティス経由で帰るので」

「アトランティスって言うんだ?」

「アトランティス帝國、帝都は神都アクロポリスにしたらしいですよ。現在の森丸々を領土とし、神都は黒い壁に囲まれています。アクロポリスにる際法に同意しないとれないようです」

ゆったりと話をしているとぞろぞろと騎士達が集まってきて、荷を纏めた侍組もやってくる。

乗り込んできた初見組の侍がうろうろする中、騎士達や戦闘侍達は會議へとろうと思ったら客人がやって來た。

「ハンネス殿下、エーリック様がお見えです」

「エーリック殿が? なんだろうか。通して良いかな?」

「もちろんです」

エーリック。

マーストトップの三男である。ハンネス殿下との仲は良い。

メイドに通され馬車へとってきた。その表は驚きと、微妙に商人の顔になっている。

「やあ、エーリック殿。挨拶かな?」

「やあ、ハンネス殿下。そうだったら良かったんだけどねぇ……。単刀直に聞くよ? ……何か、あったかい?」

周りの騎士達や戦闘侍達はエーリックの言葉で軽く警戒心を上げる。相手側の妨害工作……と言えなくもないセリフだからだ。

しかし、問われたハンネスやハンネス付きの侍達は全く気にしていない。

それよりむしろ非常に焦った表をしていた方が気になる。

「……もしかして?」

「うん……朝から落ち著かなくてね……。時間が経てば経つほど酷くなるんだ。それで居ても立ってもいられなくなってね。とりあえず大事なだけ持って部屋からでたら、何かファーサイスの皆が集まってるもんだから、ハンネス殿下がいるかもと思ってさ」

「なるほどね……」

エーリックは《危険知》スキルが生まれつき非常に高い。

自分のに危険が迫っていると漠然と分かる。嫌な予がする。蟲の知らせ的なスキルだ。

ただ、無視をするには気になりすぎる程はっきりしているし、當たる。

エーリック本人どころか知っている周囲の者達ですら、無視する事が無くなった程度には実績がある。無視するには當たりすぎているのだ。

それを聞いた騎士……魔法師団の1人がく。

「風の霊様、お願いしたい事があります」

一応分類的には《使役魔法》に位置する《霊魔法》。

霊魔法》と言うより霊との関係が変わった……と言えなくもない変更があった。

霊と契約するには『契約したい人霊に呼びかける方法』と、『霊が気にった相手と勝手に契約をする方法』の2つがある。

上下関係は無く、どちらかと言うと友達・友人関係と言った方が良い。

霊と契約すると手の甲にマークが現れる。このマークは契約した霊の屬による。

呼びかけると言っても、霊を前にして言うわけではなく、呼びかけてから霊からのコンタクトが無いようならみ薄だ。

『この人となら契約しないでもない』と言う霊が近くにいれば寄ってくるだろう。

『この人と契約したい!』って言う霊は自分から勝手に契約するのだ。

霊と契約できる人は所謂『良い人』だが、當然『良い人』じゃなくなった場合ふらっといなくなってしまう。

つまり、霊と契約できたからと言って天狗になっていると、霊本人にへし折られる。

風の霊に呼びかけた魔法師団の騎士は、手の甲に緑の翼のマークが現れている。

呼びかけから2秒後ぐらいに『なにー?』と契約霊が現れた。

霊は基本"念話テレパス"で會話するし、姿も見せないため他の人達には見えていない。

完全に獨り言である。

「この辺りを囲っている人達がいると思うのですが、どういった格好をしているか、それとどういった會話をしているか、分かりませんか?」

『姿は見に行かないと分からないけど、會話ならすぐ拾えるよー?』

「では會話だけでもお願いします」

『じゃあ魔力し頂戴』

「今後を考えるとあまり使いたくはないのですが……これで足りますか?」

『十分ー』

風の霊に魔力をしだけ與えると、複數の聲が馬車の部に聞こえてきた。

ただ、問題があるとすれば周囲にいる奴ら全てを拾っているので聞き取れない。

ルナフェリアと原初の霊達程度の付き合いの長さなら、最初から重要項目だけ絞って拾ってくるだろう。つまり、付き合いが短く何を求めているかがよく分からない為、全て拾うしか無いのだ。

霊達が特に重要と思わないが、人間社會からしたら超重要と言う事もありえるのだから。

とりあえず馬車にいる全員でピックアップしていく。

そして徐々に聲が絞られていき、恐らく重要人の會話が拾うことができた。

『さて、準備は良いか?』

『へへへ、もちろんだ』

『ヒヒヒ、楽しみだぜ……』

『良いか? 上玉は傷つけるなよ? 価値が下がるからな。野郎は殺しても構わん』

『気にったのは持ち帰って良いんだろう?』

『持てるならな』

『ヒヒヒ、壊れるまで犯してやるぜ……』

『おい、ここで始めんなよ? ああ、それと野郎は殺して良い言ったが、この國の王子もいるらしいからそいつは捕まえとけよ』

馬車の部にいる全員の目が據わっていた。當然といえば當然だが。

霊から囲んでいる者達は冒険者の様な格好をしていると言う報もる。

そして、ハンネスが口を開く。

「すぐにアーレント伯爵令嬢を探してきてくれるかい? 彼は間違いなく上玉にるよ。そして彼は聡明だ。すぐに狀況を理解して『尊厳や名譽』を選ぶだろう。もう拉致ってきても構わない、急いでくれるかい?」

隊長が數人かし、更にブリュンヒルデも侍を1人付ける。すぐに連れてこられるだろう。

「さて……見事に最悪の狀況になった訳だが、やることは変わらん。東のアトランティスまで無事にお連れするだけだ。覚悟は良いな?」

「愚問ですよ隊長」

「これで死ねるのなら騎士の本でしょう」

騎士達や戦闘侍達はうんうんしているが、ハンネスは微妙な顔をしたがすぐに戻った。

自分を守るために死にに行く騎士達を堂々と見送るのだ。

騎士達がそれで良いと、どうか嘆くのではなく王族を守るために死んでいった私達を覚えていてくれるだけでいい。そういうのだからそうしてやるのが彼らに対する最大限の褒となるだろう。

そして、騎士達はき出す。

まず、周囲の……他の國の騎士達すらも巻き込む。

他國とてこんな所で王族が殺されても困るだろう。ファーサイスとしても借りが作れる訳だし、人手が増えるわけだから悪くはない。

しかも、このルナフェリア製馬車に守るべき人達を纏めてしまえば楽でいい。乗った場合気にするのは馬の方だ。流石に自走はしないので、引っ張る馬さえ守ればいい。向こうとて馬を狙ってくるだろう。

ただ、狀況としてはかなりよろしくない。

ここは隔離に近い學園地區だが、冒険者……と言うより最早盜賊に囲まれており、ここがこの狀態なら王都中がほぼアウトだろう。実際火災がおきているであろう煙が見えるのだから。

正直この王都に安全な場所は無いと思って良さそうだ。

そして、流石に數カ所で家事であろう煙が見えれば異変に気づく。

學園地區が慌ただしくなり始めた。

「これは不味いか?」

「そうですね。混狀態でしょう。そうなると……」

「落ち著く前に囲んでる奴らが突っ込んでくる……か」

「それが効果的ですからそうでしょうね……」

「しなかったら無能も良い所ですね」

「こんなことしてるだけでも十分だろう」

「……確かに」

テキパキと勢を整えつつ、周囲の警戒を進める。

ブリュンヒルデも侍達に指示を出しておく。とは言えこちらの指示はこの馬車の仕様や、何がどこにあるなどの説明だが。シャワーなどの使い方。ポーションなどの魔法薬の位置。著替えなどの予備が置いてある場所。更に食料として何があって、どのぐらい保つ見込みか。などなどだ。

いつ、誰がいなくなるか分からないんだ。全員が知っていないと困る。

「アーレント伯爵令嬢とお供、更にご友人をお連れいたしました!」

「ああ、見つかったようだね。さっさとれちゃって」

お決まりのようにってきた者達が馬車に驚く。特に友人としてついてきたドワーフが。

だが、現在それどころではない。現在の狀況とこれからどうするかが、ハンネス殿下と隊長から説明される。

そして、それを聞いたアーレント伯爵令嬢は……。

「そんな馬鹿な……。學園を狙ったら他國とて黙っていないのに……。まさか、それが目的……?」

「うーん……。やっぱそう思う? 自分達で仕組んでおいて、自分達が介するとか? 一応隣國ではあるし、準備しているなら行も早いだろうしね……。それに他國も黙っていないだろう。こんな事が起きたら王に責任追及が行く可能がほぼ確実。狙いはこの辺りかな?」

ハンネス殿下がアーレント伯爵令嬢の呟きに自分の推測を返した。

そして騎士は騎士達で全員揃い、今後の話だ。

「さて、恐らく……いや、間違いなく囲んでいる奴らが突っ込んでくる。その為、まずそいつらがここに殘る。他は馬車に乗り、要所要所で降りていき対応をする事にした」

『そいつら』で隊長が指した者達はベテラン勢の半數だ。

「で、ですが……!」

「まあまあ、そこからは何も言うなって。俺らにここは譲ってくれよ。かっこいい思いさせろ?」

「そうそう。お前らは一応まだ若いんだ。しでもお前らが殘る可能を高くしたいと思う年寄りの我が儘だよ」

「それに考え方を変えろ? 何もお前らが頼りないんじゃねぇ。お前らに託してんだからな? 確実に、絶対に……無事に送り屆けろよ?」

「「「はっ! 確実に!」」」

「くっくっ……。いい返事するじゃねぇか。任せたぞ」

「んだな。さて……師匠に散々扱かれたんだ。いっちょやってやろうじゃねぇか」

これからほぼ確実に死ぬ事になるだろうに、ベテラン勢の顔は完全に狩る側のそれだった。

だってもう、そいつらの會話が騒でしか無い。

「何人殺ったか、勝負しようぜ?」

「上等だ。あの世で聞いてやる」

「2桁行かなかったら地獄巡りな」

「……おい、地獄巡りって灑落にならなくねぇか?」

「……気のせいだろ」

「「「ハハハハ」」」

逞しいと言うべきか、勇ましいと言うべきか、むしろ馬鹿野郎と言った方がいいかもしれない。

ただ言える事は、悲壯なんては一切なく、皆殺しにして帰ってきそうですらある。

馬車の中で馬の手綱を握る者、馬車の中から馬を魔法で守る者、者席に座り直接馬を守る者などなど、それぞれがそれぞれの位置に付く。

「ニコラス殿下も連れ出しちゃった方が良かったかな? 殺される心配は無さそうだけれど……」

「この國の王子ですからね……」

「連れ出すわけにはいかないか……。彼も王族だもんね……」

12歳の子供といえ、王族は王族。々することがあるだろう……そう、々と。

ハンネスも國が違うとは言え同じ王子だ。この狀況で來るか? と問われればNOと答えるだろう。

同じ立場、そして親友だからこそ分かってしまう。

何より、探しに行く時間は……もう無い。

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